思い出がいっぱい




プロンテラ近郊の、小さな看板の下で
僕はひとり座っていた。
誰もいない静かな場所で
時折人が、イズルード目指して通り過ぎるけど
それ以外、人があんまりいないところ。
ポリンやルナティックが楽しそうにはねる音を聞きながら
昔のことをよく思い出したりする。
「昔は楽しかったなー」
無意識な独り言にハッと気がついて
今言ったことを後悔する。
昔、昔って過去のことばっかり考えるからこーなんだ、と
自分に言い聞かせるようにして立ち上がり
腹いせにGXを唱える僕。
精神を集中し、目を閉じ力をためる。
そして一気に精神力を放出する。
僕の周りに、すさまじい音と十字型の光の柱が現れる。
それに気づいたポリンやルナティックが逃げるように走っていった。
GXの反動が僕の体を襲い
痛みと、体力の消耗でまた座り込んでしまう。
「何やってるんだろうなぁ・・・」
また、独り言がでてしまう。


こんな風にぼーっとしてしまうようになったのも
何か物足りなさを感じるのもここ数日のこと。
今、僕はギルドに所属しているが
ほとんどと言っていいほど人がいなくて
脱退してしまおうかとも考えている。
それでも結局何もできなくて
ただみんなが帰ってくるのを待ってるしかできなくて。
昔は・・・
いつでも看板に人がいて
僕が行ったら
「こんばんは〜」って声かけてくれて
みんなでおしゃべりして。
ギルドが違う人もいたけれど
それでも僕らはすごく仲良くって
みんなでわいわいしてたよねって。
マスターいじるのが楽しかったとか
みんなでゲフェンダンジョンや監獄行けたりしたのが
すごく楽しかったとか
思い出すのは楽しいことばっかりで・・・。
時々喧嘩もしたけれど
それもまた良い思いでだなぁって思えて
それを今思い出して、涙が止まらなくって。


時々居てる、アサシンさんも
僕と一緒のこと考えてるみたい。
僕よりもずっとずっと考えてるみたい。
それなのに僕は
まだ半年もたたないこの時間の中で
もう音を上げてしまっている。
おわかれを聞いてないから
きっと帰ってきてくれる。
ずっとそう思ってたけど、それもまだかかりそうで。


このラグナロクは、すごく広い世界で
僕が思ってる何倍も、何十倍も広くって。
その中の1人でしかない僕は
こんな小さなことをずっと悩んでるんだなぁって思って
少しおかしくなって、立ち上がって空を見上げて
「あほー!」
って大声で叫んだ。
涙をぬぐってすっきりしたところで
知らない人と冒険に出かけようと思い
僕は臨時広場へと歩いていく。
ギルドの人たちだけじゃないってのはわかってる。
友達だってたくさんいる。
わかってるけど
思い出すとまた会いたくなるから
今だけ、少し泣いてもいいですよね。
みんなが帰ってきたときに
笑顔で迎えられるように。


僕のいなくなった看板で
大きな笑い声がする。
ここは、いろんな人が集まるところで
今は違うギルドの人たちの溜まり場になってるみたい。
みんな本当に楽しそうで
僕が顔をのぞかせると
みんな当たり前のように輪に入れてくれる。
そんな人たちがラグナロクにいる限り
僕もみんなを待ってようと思います。
いつか、新しい仲間に
「これが僕の大切な仲間だよ」って言えるように
みんなのこと、堂々と胸張って待ってます。
そしたら僕は、ずぅーっと笑える気がするから。
おかえりなさい。


-End-

by Ria. from05/4/23


あとがき

仲の良かった友達がみんなRoから一時はなれてるときがあって
そのとき寂しくてたまらなくて書いたお話です。
みんなとは結局離れ離れになっちゃったけど、また僕は新しい友達と出会え楽しくやってます。


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